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脱出行

 

最後・・・最後の1メートルだ。

わたしの目の前に、このぬらぬらした“柱”の終着点である崖のふちが見えている。もう、へとへと・・・気力だけ・・・気力だけで必死に、何とか前に進んでいく。そして、柱はどうも下から支えられているらしく、終わりに近づくにつれぐらぐらと左右にゆれ始めている。そして、柱が動くごとに、敏感な肌がヌルヌルとしたそのテクスチュアに擦り付けられ、体内の蟲が・・・ 

(あああ、もういやぁああ! どうにかしてよおお!!)

死にたいとも思った。さっきからこれの繰り返しなのだ・・・でも、もうすこし・・・もうすこしで・・・ 一番手前にある石に、やっと、手が、かかる! そして、もう一つの手も・・・ 両手で、体をひきつければ・・・ どうにか・・・ 

だめだ・・・もう力が入らない。しかたない・・わたしは、蟲どもを刺激してしまうことを覚悟して、何とか体を縮め、尺取虫のような格好で進もうとする。そのときだった。

メキメキッという音がし、柱が更に激しく揺れたと思った次の瞬間、突然、わたしの体の支えが消え去るのを感じた。そして、私の体の全面はしたから激しく引っ張られるような感覚を覚えていた。

「はっ!」

柱が崩壊したのだ。必死で両手に力を込める。わたしは、15メートルの崖の上から両手を岩にかけてぶら下がる格好になっていた。

「く・・・・」

まずい、あまり腕に力がもどっていないのに・・・このままでは・・・・あ・・・な・・・なに?!!!

突然、脚の方から体の前にかけてぶるぶると激しく震えるような感覚が通り抜ける。その感覚は肩の辺りで大きく固まり、そのまま一気に両腕を駆け上り、指先から抜けていく・・・

蟲たちだ。私の体から、蟲たちが抜けていく。さっきまで緊張していた筋肉がリラックスし、体中の懲りが取れた・・・

(なんで・・・)

「そ、そういう・・・こと??」

そうだ・・・おそらく、蟲達には自分の命を護る為の習性があるのに違いない。そして、私の体の中にいたら、わたしが力尽きて落下するとともに自分たちも死んでしまうに違いない。そう「考えた」のでは?(そこまで、かしこいの・・・)

(残念ね。わたしは、他の人間より柔ではないわ!)

両腿を体にひきつけ、前にある壁を軽く蹴る。そして、身体が地面と水平になりかけた瞬間、思い切り腹筋を縮めさせる。身体が崖の淵に乗りあがるように近づくと同時に右手を前に差し出し、先にある岩を手がかりに、体を崖の上に引き上げる。 勢いがあまって、わたしは柔らかな赤い地面の上で前方に一回転したあと転がった。

(すこし・・・すこし、休まないと・・・)そう思ったときだった。回りからしゅるしゅるという音がした。うなだれていた顔を上げる。ザザ蟲!

来る! さっき私の体を抜け出た10数匹もの、気持ちの悪い生き物が! 必死に膝立ちの体制になり、飛びついてくる蟲に向かって手刀を放つ、最初の数匹はまるで脱皮した手の蟹のような手ごたえでわたしの掌の隅にぶつかった後、跳ね飛ばされ、ぶつかった先の壁につぶれて張り付く。(やった、殺せる!) わたしは、狂ったように両手を回転させ、4匹、5匹とこの汚らしい蟲どもを地獄に送る。(あと・・あとすこしで・・・)両目の隅から確認したのこりの数は3匹。そう思った瞬間、

「ふ、ぁぁああぁぁあああああ!!!!」

お尻が硫酸に漬けられたような強烈な感覚に襲われ、わたしはその場で動きをとめてしまう!! 後に・・・後にもいたなんて! 次の瞬間、前の3匹が一気に体に飛びついてくる。2匹は両胸をめがけて、そして、もう一匹はおなかに!

「いや! いやあああああああああああ!!!!!」

わたしはゆかに崩れ落ち、苦しみと、強烈な官能に体をのた打ち回らせる。右胸が地面から飛び出した岩にぶつかり、鋭い痛みが走る。

「ひっ!」

鼻先に更にもう一匹の蟲が踊るのが見える。(いやっ!絶対!)

渾身の力で右手を振り上げ、蟲に叩きつける。グシュンという音と同時に蟲がつぶれる。体の中で暴れまわられる感覚に全身を跳ね回らせたまま、必死であたりを見回す。(今のが・・最後・・・)

そう思うと同時に、お尻の中の蟲に狂おしくわたしの胎内をかきむしられ、はしたない声を上げてしまう。

「くふぅああああああああ!!!」

その声に反応したように、左の胸と右のソケイ部のあたりからもどかしい感覚がせりあがる。

「ひぁっ! くっ!・・・ふぁあぁああ!!」

わたしは、まるで釣り上げられたように膝立ちになり、宙に手をかきむしるように伸ばし、体を捩じらせて、この痛烈な感覚にたえている・・・

(なんとか・・・なんとか・・・しないと・・・)

3匹、さっきより少ないのに、こんなに・・・辛い!柱を登ってきたときは十数匹に体内を苛まれていたはず。それが今はここまで減っている。なのに・・・たった3匹なのに・・・ たった・・・3匹・・・3匹?

頭の一点が急速に冷却されたようにクリアになってくる。私は宙を掻く様に伸ばしていた腕を思い切り左に乳房に叩きつける。

「きゃぁあああん!!!」

強烈な痛みが走る、指先にぐしゃっとした手応え。床を見ると灰色の蟲が体液をしぶかせて横たわっている。

「くぅぅううううっ はぁあああああっ!」

連続して下から沸きあがってくる官能に耐えながら、さらに、右のソケイ部にも少し軽めにチョップをいれる!

「はふぅううううっ!」

右の腿の付け根から何かがボトリと地面に落ちる。駆け逃げて以降とするそれを右ひざで踏みつける。中身の緩んだアボガドを踏みつけたような感覚。勝利を感じる。

(後一匹・・・)

膝立ちのまま、わたしは次の目標を狙うべく、身構える・・・・・・・・・・・・・・・

「どうやったらいいのよ!!」

最後の一匹はわたしの胎の奥深くにいる。自分でそこを打ったら、こいつが死ぬ前に自分が怪我をしてしまう。

体から力が抜ける。(このまま行くしかないのね・・・)その場にお尻を下ろしてしまう。とたんに、子宮からアヌスのおくにかけて、激しく、切ない感覚がわきあがる。

「ぅわぅわわわあああああ!!」

わたしは顔を上向けたまま、全身を震わせなてしまう。」

そして、その感覚に必死に抗いながら必死に立ち上がり、ガクガクと震える膝を引き上げ、一歩づつ前に踏み出していく・・・

「ひぃ・・・ くはぁっ!・・・ぅぅぅぅうう・・・」

一歩ごとに情けない声が漏れてしまう。抑えることの出来ない劣情にまぶたが重くなり、目が自然と上向いてしまう。

「おんな、お前の船はこっちだぞ!」

にごった声が聞こえると同時に、髪の毛が掴まれ、乱暴に引き上げられた。イルンと同じぐらいの若いエレフィン人・・・ 男は力任せにわたしを洞窟の入り口の方に誘導して言った。

 

***

洞窟の奥には、確かにわたしの機が止められていた。

「ひ・・・っ! くはぁっ!・・・・くくくっ!」

「おいおい、ずいぶん色っぽい声を出し続けるじゃねえかよ!」

仕方がない。私のなかにはさっきの蟲が一匹残っており、それが、相変わらず激しく、そのケチン質の脚をうごめかせているのだ・・・わたしの体の中心で・・・

男は、湿った嬌声をついついあげてしまうわたしの裸身を、嘗め回すように見つめてくる・・・

「ねぁ・・・ああああ・・・・ねぇ・・・」

そういうと、わたしは男の股間に手を伸ばす。硬い、巨大な強張りがそこにあった。

「ほぉ、そこまで欲情しているか??そりゃそうだ、あの柱に股を擦り付けながらのぼってきたんだものなあ?」

そういうと男はわたしの手首を掴み、後にねじりあげた。わたしが痛さに顔をしかめるまもなく、両方の手首を背後で縛りあわされてしまう。

「でもよう、お前さんもADDだ、何企んでるかわからねえ。っといって、こんなにうまそうな地球のおんなをほっとく事もねえからなぁ。」

顔が地面におしつけられ、 そして腰の前に回った手でお尻を高く上げさせられる! 

「この体制なら 大丈夫だろう! へへへ・・・そらそら!」

おとこは、その硬くなり、熱くなったこわばりを私の中心にあてがってくる・・・

「こんなに・・・ぐっしょりだぜ・・・」

わたしは、腰を左右に激しく振る。そのしぐさは欲情しきった牝猫のそれだったに違いない。

「ねぇええ・・・・ねえええ! おねがい・・・おしり・・・お尻にも・・・指を・・・」

男が後で一瞬息を潜める。そして・・・

「ほおおお・・・ADDのエリートさんはそんなのが好きなのかイ??」

深いため息の後、強烈に好色な声が響いてくる。そして、こいつの、ごわごわした肌に包まれた太い指が濡れそぼったわたしの中心にすり付けられる・・・

「うううう・・・は・・・くっ!・・・」

わたしは、自分から腰を振って、硬い指に湿り気をこすり付けてしまう・・・

「もう・・・そろそろ、いいだろう??」

上ずった声で男が聞いてくる。熱い、太いものが押し付けられる・・・

「こっちも、いっしょに・・・」

男の指を二本まとめてつかみ、後のすぼまりの周りにこねるように擦り付ける

「いくぜ!」

「きてぇっ!」

男が腰を送り込むと同時にわたしもお尻を後にぐっと突き出す!

は・・・入って来る!

「う・・・うああああああああああぁぁぁぁっ!!!」

蕩けきっただらしのない声・・・それをあげたのはわたしではなかった。男のほうだった。体の中心の違和感が消えると同時にわたしは、跳ねるように体を男から放す。床には快感にのた打ち回る男の姿があった。

「水は低いところに流れる。その蟲もわたしの中より、より自由に動き回れるあなたの体のほうが住みやすいはずよね??」

立ち上がろうとする男の頭を激しくかかとで蹴りつける。男が昏倒すると同時に、蟲がゆっくりと男の胸元から這い出す。わたしはそいつをかかとの一撃で押しつぶす。

(ロジャーを・・・ロジャーをたすけないと・・・)

右手を・・・顔の前にかざす・・・。ロジャーのバイオモニター。彼の生体情報を確かめる。ランプが赤々と付いている・・・点滅・・・していない・・・???

(ロジャー・・・そんな・・・)

死んだの・・・??赤の点灯はサブジェクトの死を意味する。

(ならば・・・)

わたしは、そこに倒れている男を引きずりながら何とかわたしの機のカーゴ室におしこむ。そして自分はコックピットに滑り込み、コンパートメントに収納していた漆黒のステルススーツを身に着ける。

3分後、わたしの機は超光速でこの星の重力圏を抜け出していた。



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