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セリが終わると、わたしは全裸で拘束された格好のまま黒塗りの大きなホバーカーに乗せられた。座席は3列になっており、私が乗せられた最後尾の列は前の二列とは透明の板で仕切られていた。すぐ前の席はわたしを競り落とした老人。そして前列には運転主らしい男が座っていた。
目的地につくまでの約10分の間、車内では一切の言葉が交わされなかった。老人は大枚をはたいて競り落としたわたしになんらの興味を持つでもなく、ずっと前を向いていた。ホバーカーは約10分のあいだスラム街の中を駆け抜けると、まるで使い古しのブリキ缶を重ねたような奇怪な形の建物の前で止まった。わたしは運転手の男に拘束具の後ろ側を掴まれ車外に引き立てられた。男とわたし、その老人が円筒形の前に立つと突然建物の壁に黒い長方形の闇が開いた。わたしは男たちとともに中に連れ込まれ、さらに小さな部屋の中に引き入れられた瞬間、眠るように意識を失った。
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「起きたかね?」
静かな声が、しかし、まるで直接脳に何らかのケーブルを伝って直接伝えられたかのように妙にはっきりと伝わる。目を開け、前を向くと粗末な石の壁に囲まれた部屋が見えている。わたしはそこに両足を開き両手を真横にのばして、空間拘束されていた。上体は多少前に倒され、大き目の丸いお尻が軽く突き出されるような姿勢だが、自慢の長い足はピンと伸ばされていた。まるでストリッパーが踊りの最中に観客を挑発するような格好はわたしを競り落としたスケベな老人の趣味だろうか? 今からゆっくりわたしがセリ値分の価値があるかどうか吟味しようというのか? 大丈夫、あなたがわたしに払った額の何倍ものダメージを与えてあげるわ・・・わたしは心の中で、リザディア人の姿を探しながらそう思った。
誰かがわたしの、お尻をまるくなで上げてくる・・・「完璧だ・・・」 後ろから声が聞こえてくる。(当たり前でしょ!) 心の中で誇らしげに声をあげる。
「これなら、ジャロン様の慰み女にふさわしい・・・」
リザディア人が前に回りこみ、わたしの顔を覗き込む・・・
「ジャロン・・・って、だれよ?」
わたしは聞いた。そうか、こいつはただの小間使い・・・ となると、脱出は・・・でも大丈夫なはず・・・とにかくジャロンってやつがどういうやつなのか・・・それを見つけないと・・
「いってよ、どんなやつなの?ジャロンって??」
リザディア人は黙っている。
「教えてよ・・・すぐに会えるとおもうけど・・・ねぇったらぁ・・・・」
わたしは哀願するような困った表情をリザディア人の老人に向ける。情報を得たいという気持ちと、どうやら相当気弱なリザディア人を困らせてもてあそびたいという気持ちが半々になっていた。と、次の瞬間、
「ぎゃぁああああああああああ!!!!!!!!!!!」
右のわきの下から、背中、そしてお尻にかけて強烈な打撃がおそう。わたしは身体を反らせ、無様な叫びを上げてしまう。目の前が真赤に染まり、一瞬、息がつまり、びりびりとした刺激に、体の背面がしびれあがる。
「ねぇちゃん・・・宮であっただろう?おれがジャロンさ。」
何とか息をついたわたしの前に、迷路のような刺青におおわれた頭がつきだされる・・・そう・・・あの男・・・あの、アイパッチの男だった。
(や・・・やだ)
心の中で弱気な声が出ていた。この、男に見据えられたとたん、心の奥が冷え込んでいた。なぜだかわからない。ただの太った中年の男。でも何か、いやでいやでたまらなかった。そして、怖くて怖くて仕方がなかった。
「かわいいじゃないか?ええ??」
わたしの恐怖と嫌悪を見透かしたような堂々としたまなざしで、男は顔を近づけてきた。わたしは必死によけようと顔をねじった・・・すると、かまわずくさい息のする口をわたしのほっぺたに押し付け、いやらしい舌を首筋に這わせた。
「や・・・やめて! いや!きもちわるい!」
わたしは、余裕を失い本気で嫌がっていた。男はそんなわたしとひとしきりもみ合った後、顔をはなし、ぐしゃぐしゃになった私の髪の毛を掴んで顔を上に上げさせると、いつの間に口にくわえていた葉巻の煙をわたしに吹きかけながら・・・
「そうか、まだいやか?」
そういうと、もう一度葉巻を口にくわえ、リザディア人に対して何か合図を与え、わたしからはなれた。
次の瞬間、後ろのほうからまるでドリルの音のようなものが聞こえた。いや、なに?わたしは後ろを振り向こうとした。しかし、空間拘束のおかげで体がひねれない。
「みたいか?よし、見せてやろう。」
わたしの前の壁、ジャロンの立っているところのあたりに薄い色のスクリーンが下りてきた。そして、そこには、足と腕を大きく広げ、腰から上を前に倒して、目の前のスクリーンを凝視している恥ずかしいわたしの姿が横から映っていた。そして、スクリーンのカメラの視点はゆっくりと後ろに向かって回り込み、わたしのお尻の後ろに立って何か、コードのついた赤い棒のようなものを握っているリザディア人を映し出す。
「おれのものだ。俺のしるしを付けてやる。」
(刺青?)わたしはおもった。アカデミーの一年生のとき、同級生と何人かで古代の水兵のまねをして「錨」(どうも”船”を減速するのに使ったらしいが・・・)の形の刺青を腕に入れたことがあった。もっとも、直後に実家に帰った後に親に見つかり、除去することとなったが・・・
「刺青だと思ったか? そんなものは消えちまう。」
そうジャロンがいった瞬間目の前のスクリーンに映った赤い棒の先端がわたしの左のしりっぺたに押し付けられ、そして、埋没していく。そして、その瞬間しびれるような、蕩けるような感覚がわたしをおそう。
「う・・・くわぁあああああ・・・・」
必死で、声をこらえる。
「たまらねぇだろう? バイオ・ブランディングだ。つまりな、遺伝子レベルでお前の尻にマークを付けてやってるのさ。もう、何をしたってとれねえよ。」
い・・・いや!こんな、やつの、しるしを一生付けて回るなんて。!!
絶望的な気持ちで目の前のスクリーンを見つめる。画面に映ったわたしの豊満なお尻に、黒々とした印が付けられていく。リザディア人が持っているスティックはゆっくりとじらすようにお尻の肌の上を這い、「S」のようなマークを残していく・・・ 全身が震え、カーッと体温が上がっていくのがわかる。
「そのマークはな、大昔、俺たちのコロニーの奴隷に付けられたマークだ。それも囚人や、ドブさらいのような最低の連中のセックスの世話をするだけの最低レベルの奴隷どものな。 今じゃ使われなくなったがな。そして、おれ、ジャロン様の頭文字でもあるのさ。これから、俺様の性の奴隷になるADDの雌犬にはぴったりだと思うがな。」
く・・・くやしい・・・わたしは歯を食いしばり、流れ出る涙を必死でこらえようとした。しかし、熱い粒がほろほろとほほを伝い、あごから落ちていくのをとめることはできなかった。やっと邪悪な烙印入れが終わり、気の狂いそうな屈辱とあまりに生々しい汚辱間から開放されたときにはわたしはすすり泣きながら、首をうなだれ、肩を震わせているばかりだった。