直線上に配置

 

部屋に帰ったわたしはすぐに帰還の準備をはじめた。このチャンスを逃がしたら・・・

もう、ドゥイエ大佐の慰みものになるのは嫌だった。早くこの呪われた空間から抜け出したい。早く、基地へ、いや、地球へ帰って、友達や仲間のもとへ・・・。奴隷船?人のことなんか・・・大佐の出動を待って、脱出ポッドに乗って、そうすれば、スターゲイトを超えたところでパトロールに見つかるだろう。大丈夫。訓練中の脱落なら軍法会議にもかからないですむ。

 

でも・・・ブラック司令官は怒るだろう。わたしにやさしくしてくれた、ADDの中で最もあこがれていた人。あああ・・・・。それに奴隷船の中の・・・あの人たち・・・どんな目に合わされているのだろう・・・。さっきの画像が目に浮かぶ・・・。あれに比べたら、わたしが今通り過ぎている訓練なんて・・・ あんな卑劣な奴らゆるせない。

 

わたしはゆっくりと顔を上げた。目の前に鏡が写っている。そこには昨日と同じ、多少うなだれ気味になったわたしの姿が写っていた。そして、その瞬間、私は自分の姿をなぜか恥ずかしいと感じた。ぐっと、背筋を伸ばす。そして鏡に映った部屋の外の宇宙をにらみつけた。(まだまだ、やれる!) とたんに、自分の瞳に光が宿り、力が湧いてきたような気がする。(わたしは、あの変態ドゥイエの特訓にも耐えた。絶対、あの人たちを助けて見せる!)そう、大佐の特訓は、多少の趣味は入っていたかもしれないけど、地球人の女の人たちを陵辱する淫獣とも言うべき卑屈なエイリアンとも渡り合えるための訓練だったのだ。わたしは見せてやる。自分なら、それが出来るということを!

 

***

 

「手順はわかったか?

ドゥイエ大佐がスターホッパーの中にいるわたしに問いかける。

「はい」

「燃料はちょうどこの星を回りこんで奴隷船の前に出たぐらいで尽きるようにしてくる。不審に思われるだろうが、おまえは・・・」

「シナリオは分かっています。」

私はいらついたように大佐の説明をさえぎった。

わたしの乗った小型艇はスターゲートを越えた途端に外宇宙に投げ出され、燃料も尽きたという設定で漂っているかのように見せかける。わたしは軍人ではなく、民属のパイロットに扮して奴隷船にSOSを発信させるという手はずだ。船内の空調も暑めに設定し、露出の多い衣装を着ていけば、奴隷商人たちも攻撃する前にわたしを商品にしようと考えるだろう。

 

「発進します。準備をお願いします。」

「分かった、エマージェンシーのときは、イヤリングにある発信機だ。わかったな?」

わたしは無言のままうなずき、スターホッパーのシールドを下げた。

 

***

 

ハイピッチな機械音とともにシールドがあいていく。一人、二人・・・5人いる。ミュータントや、昆虫に似たインセクトイド、軟体動物みたいないやらしい奴、それにアザラシのような顔を下奴・・・みんな下卑た表情でこっちを見ている。

 

「ヒヒヒ、上物ジャネーカァ!」

「オ嬢サン、『チャンプル号』ヘヨウコソ!」

「コレカラ、味ワッタコトモナイヨウナ、凄イ体験ヲサセテヤルゼ!」

 

「キャー!!!」

わたしはおびえたような叫び声を上げ、身をちじこませる。

「ソラソラ、ソンナトコニイツマデモ居レネェダロ!オヘヤニ御案内ダ。」

「コレホドノ上物ナラ、先ズ俺タチガ味見シナイトナ!」

 

「いやだ! いやだぁあああ!!! はなしてぇえええ!!!!」

男たちはわたしのからだをコックピットから無理やり吊り上げた。わたしは、抵抗しながら体中をいやらしくまさぐられ、衣服をはだけられ、引きずるように奴隷船の内部に連れ去られながら、心の中で作戦の第一段階の成功を思って、ほくそえんでいた。

 

***

 

一度奴隷船の内部に入ってしまえばこちらのものだった。わたしはこのタイプの船の見取り図は完全に頭に入っていた。ドゥイエ大佐の予想どうり乗員は快適な艦橋近くの居住区を使い、奴隷たちは分離可能な荷倉に入れられているらしいことはすぐわかった。『そうすれば検閲のありそうなとき、荷倉だけを宇宙に捨てられるだろう。』そうドゥイエ大佐が言っていたのを思い出す。

 

「コッチダ、元気ナオジョウサン」わたしは全裸に剥かれた身体に乱暴に縄をかけられ海賊の一人に縄尻を取られて船の中を船橋に向かって歩かされていた。頭の中で周りの風景を見取り図と比べる・・・この辺だ・・・ わたしは、ガクリと膝をおって倒れかけて見せる。

「ホラホラ、ドウシタンダ??」 男が覗き込む。手首の関節をはずして両手の縄を抜けたわたしはそいつの顔に頭突きを見舞わせてやる!

「ドォッ!」 

男が顔の真ん中から血潮を吹き上げて卒倒する。 わたしは、男の身体を通路の側溝にうちやり、機械室に向かう。そして、荷蔵の接続の切断のシークエンスをスタートさせる。そして、エンジンコントローラーに忍び込み、5分間後に停止のコマンドを打ち込む。

「ソコマデダ!!カクゴシロ!」

後ろから声がする。慌てて振返る、はっ!囲まれた! 通路が集中するエンジンコントローラーの周囲の6本の通路に一人づつミュータントが立っている。

わたしは恥らうかのように両腕で胸と前を隠し身体をかがませる。

「ナニヲシオラシクシテヤガル?!

男たちが迫ってくる! わたしは瞬間的に身体に巻きついていた縄を解き、結び目もそのままに、それを頭の上の高さで振り回す。途端にたじろぐような悲鳴が聞こえ、化け物たちが身をそらす。わたしは縄を今度は天井からたれているフックに引っ掛け、そこからぶら下がって自分の正面にいる化物とその対角線上にいる奴、そのまた反対側にいる奴と、たて続けに4匹のテンプルにかかと蹴りを見舞ってやる。4匹はもんどりうって倒れ、その場にうずくまっている、そして、ロープから飛び降りた際にもう一匹の頭に向かって全体重をかけ落下する。わたしの落下スピードと全体重を掛け合わせたエネルギー量により敵の首の骨にダメージを与えようという作戦は裏目にでてしまう。首のうえに落下するつもりが、位置がづれ、わたしは大きく脚を開いたまま、その怪物の目の前に股間をさらし、そいつの両肩に膝を引っ掛けたような状態でつかまってしまう。

「アア、オレヲマッテタノカァ??!

「ヒィーーーー!!!

次の瞬間!おぞましい感覚が股間を貫く、やつが、どろどろの舌を、わたしの中につきこんできたのだ! 全身を熱い電流が突き抜ける!!

「コッチデモ、イイダロ?」

後ろから声が聞こえる・・・ア、もう一人!

「い・・・いやぁああああ!!!」

絶叫していた、おぞましくも、いまや身体がよくおぼえているあの感覚が襲ってくる。後ろの奴が・・・わたしの、アヌスに・・・お尻の、穴に、長い舌をもぐりこませてきたのだ!!

(いやぁあ!!だめえええ!)やっつけなきゃいけないのに・・・駄目ぇ!・・・でも、・・・こいつ・・・うますぎる!! おぞましい変態的としか言いようのない、快感が全身を包み、お尻を中心に体がカーッと熱くなる!!(駄目、このままじゃ、負けちゃう!!)

わたしは腰を前後に揺らし、身体を硬直させ、前と、お尻の穴とで呑み込んでいる二本の器官をしっかり締め付け、形を確かめる、そして、

「ハァーッ!!」

両のこぶしで前後の敵の延髄を激しく強打した!二人の敵はわたしを乗せ上げたまま、その場にたおれた。

 

寸前に飛び降りて受身を取ったわたしはエンジン室の火事の際に脱出できるように備えられているバブル型のスペーススクーターに乗り込むと即座に本船からカタパルトを使って漆黒の宇宙に飛び出す。そして、本船の陰から抜け出さないうちに慌ててUターンをし、船と荷倉の接続位置をめざす。

(おいで、おいで)祈るわたしの目の前で荷倉と本船の機関部をつなぐ期待の裂け目がどんどん広がっていく。(やった!分離成功だわ)わたしはそのままバブルスクーターを全速で前進させ、荷倉の側面に衝突させる。荷倉の側面はぐっと粘るように衝撃を受け止め、次の瞬間、ゆっくり横方向に滑り出した。本船とのドッキング分離シークエンスの終わりを告げる緑色燈が繋ぎ目で光っているのが目に入り、わたしはあわてて荷倉の本船サイドに回りこみ、バブルスクーターで人質を乗せた荷倉をドゥイエ大佐とのランデブーポイントに向かって押し始める。うしろから大きな爆発音がおき、次の瞬間、不気味な静寂が空間を支配する。振返ると本船の機関室に大きな風穴があき、本船がゆっくりと軌道上で回転し始めているのが見えた。

 

***

 

「よくやった。ヒトミ、合格だ。」

わたしを出迎えたドゥイエ大佐は満面の笑みをたたえていた。

「大佐・・・・」

わたしは感無量だった。ここまでこれたのがすべて大佐のおかげだと分かったからだ。この訓練の前では脱出用の期待で大きな荷倉を押して脱出するようなことは考えなかっただろうし、一度に6人の敵を倒すことも出来なかったろう。特に、最後の二匹に陵辱を受けながらそれを振り切って倒すなんて・・・

「先ずこれを着なさい」

大佐がバスローブを手渡した。わたしは自分が裸だったことにはじめて気がついた。慌ててそれを身に付ける。そして、普段の卑猥な色が大佐の瞳から消えていることに気がついた。大佐の眼差しはやさしく、涙さえ浮かべていた。

「今日の作戦で君の殆どの技術が試された。もちろん、結果は合格だ。今日は良く寝て置くように。明日、13時から最後の技能試験をはじめる。飛行だ。」

そういうと大佐はきびすを返し去っていった。

 

わたしは規定の時間より2分長くあつい贅沢なシャワーを浴びた後、つかれきった身体をシーツに横たえた。そしてブラク司令官から届いているビデオグラムを見た。司令官は明日が最後の試練であると大佐に聞いていること、わたしが順調に訓練をこなしうれしいこと。相当厳しい訓練を良く耐えたと言う事を述べた後、驚くべき事実を教えてくれた。それはわたしが捕らえた海賊の一派がその昔ドゥイエ大佐の母親を誘拐したのと同じグループだったということだった。(そうか・・・だから・・・)すべてが霧が晴れるように明らかになった気がした。大佐の態度の変化。わたしを見る目の違い・・・。わたしは大佐がもう自分の敵ではないという意識と、何よりも自分が多くの捕虜を助けたこと、相当な数の海賊を逮捕できたことに満足した。大佐の命令は、そして、ブラク司令官からの命令はすぐに睡眠をとり、明日の試験に備えることだった。でも、わたしは、うすい機内服のまま大佐の寝室を訪ねた。「もう寝る時間だろう。なにをしている!」怒りながらも半分困惑気味にわたしをたしなめる大佐の口を自分の唇でふさぎながら、全体重をかけ、大佐をゆっくりとベッドに引きずり倒した。そのよる、わたしは人間のフォームを崩さない大佐の腕の中で、若竹のようにしなり、何度も激しくはじけた・・・

 

「明日の試験は2時間ずらしてスタートだ・・・」大佐の声を聞きながら、わたしは安らかな眠りについた。

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